一八八八切り裂きジャック
「一八八八切り裂きジャック」
著:服部まゆみ
1888年8月31日から11月9日までの間に、ロンドンの下町イースト・エンドにて5人の娼婦を惨殺するという、正体不明の犯人が引き起こした――実在の殺人事件。
その時代とその場所を舞台に、史実の人物たちと創作のキャラクターたちが織り成すミステリー作品。
作品そのものは主人公柏木君の一人称で始終しており、和訳っぽさがものすごくにじみ出ていたので、まるで海外の作品を読んでいるような気になりました(カタカナの名前がすごく多いのも相まって)。自分、翻訳小説とか大好きなタイプなので、ものすごくうれしかったですね。あの堅苦しい表現というか、翻訳者が頑張って見合う日本語役を選びだしてくれたあの感じというか……そういうの(語彙力!)
重厚なミステリーや、”謎解き”というよりかは主人公である「柏木君が綴る日記」という表現がしっくりくるため、明確な犯人捜しや巧妙なトリックを所望される人には向かなさそうなミステリーだと感じました。
柏木君が見て感じた、ロンドンのなんてことのない日常。その中で女性を切り刻む切り裂きジャックの事件が発生する。
けれど、それを追いかけるのは主人公ではなく同居している友人の鷹原君(ものごっつなイケメン)。
そもそも当の主人公である柏木君は(イギリスに来る前にドイツに居たのですがその、)ドイツに居た時点で(某鈍器小説の関口君より幾分かマシだけど)情緒不安定だし、謎解きは基本彼はしてくれなかった印象。ただし結構柏木君も重要なポイントに居ます。
様々な騒動を経て、解が読者である自分に出された時、それこそ「せやろな!」感はありました。でも、そのあとに出てきた証拠物うんぬんだとかはなるほどなるほ、……なるほどなー!!?? とめちゃくちゃに納得しました。これだからミステリー物は楽しいんです。大事なのは犯人だけじゃない。証拠もパンチがあればあるほど面白いのです。(自分に対する戒め)
以下、私的な感想が入ります。
――何と言えばよいのでしょう。
何なんでしょう。
腐っている自分が罪深いのでしょうか。
腐っているから腐ィルターがかかってそう見えてしまうだけなんでしょうか。
鷹原くんって、柏木君のことものすっごく気に入ってますよね?????(ど直球)
主人公補正とか多少掛かっているのでしょうが、のっけの方から同居(というか、鷹原君が住んでるところに柏木君がころがりこむっていうのなんですけれどもね!?)してますし、なんだかんだで一緒に行動してるじゃありませんか?
ぶっちゃけ鷹原君が柏木君を振り回しているようなものじゃないですか???
これで途中、柏木君が襲われた(といってもあれは過言じゃないですよね!?)っていうのを鷹原くんが知ったらどうなるんでしょう……。どうもならない気もしますけど。どうなるんでしょう!? という気持ちがムラムラ。
最終的にはじーさまになっても美しい鷹原君は、柏木君を心配して飛んできてくれますしね……。バディとかそういう次元じゃないですよね???
嗚呼でも普通に仲の良い友達として、心配して飛んできそうなのもめっちゃクチャ分かるんですよね。心配だものね。
……と、自分なりに折り合いをつけて抑えてはいるものの、そう思わざる負えないのは自分が先日よんだ「この闇と光」にも同成分が含まれていましてね……。あれ……、最終的にBがLしてるじゃないですか……。してますよね…!?
なんだかんだで服部まゆみさんは、そういうの、お好きだったのかしら。と思ってしまう。いや、まだ「この闇と光」と、「一八八八切り裂きジャック」の2作品しか読んでいないから、はやとちりはよくないね!別の作品もよんでいかないと…!
あまり関係はないのですが、
創作活動をしている身として、エンターテイメント性があるものを書かねばならぬ、と思ってしまう部分が在るのですが、「そうじゃなくていいんだよ」と語りかけてくれる一冊でもあったと思いました。
「それ」でいいのだと。許してくれる気がしました。