少女革命ウテナ
【革命(かくめい)】
>英語: Revolution レボリューションは、権力体制や組織構造の抜本的な社会変革あるいは技術革新などが、比較的に短期間に行われること。対義語は守旧、反革命など。
―――ウィキペディアより引用
かつて夕方に放送されたアニメ。少女革命ウテナ。
その作品が20周年を記念して、2018年5月26日から6月3日までの9日間の間、ニコニコにて全話期間限定無料配信していたので――マラソンしてきました。
実は初見なウテナでして、観る前はリボンの騎士のような女の子の身体に男の子の精神が入った、百合作品なのかな、と思っていたんですけど……
ぜんっぜんちがいましたね!
とりあえず、コレを幼少期に見ていたら性癖がねじ曲がる率が高い、と言われるのも納得しました。終盤のアダルティーさとキャラクター関係の人間関係、心理戦が子供アニメの枠をぶっ飛んでいる。
そんな枠をブッ飛ばしているウテナを見た簡単な感想として、
大人や固定観念、概念、自分を縛る殻からの「解放」。
そして、女の子だって、王子様になれるし、誰かを助けられるし、誰かを救えるのだと、教えてくれた気がします。
ウテナとアンシーの関係を軽率に「百合」と呼称してはいけない気がする。そもそもアンシーが終盤になるまで心を開いているとはあまり思えなかった(徐々に意識革命されてはいても)ところも大いに絡んではいますけれど。多分、最終回の後こそ……なんだろうなぁ。
でもこのアニメの中においての物語としては、「女の友情」も描いているのだと、思う。
あとやたらと男性陣が上半身を脱ぎ始めていたり、まあ、うん、アレなシーンが鳳暁生編からドブドブ出てきていて、いまなら深夜域確定まちがいなし。と思わざるをえませんね。うん、アレは夕方にやっちゃまずいと思……いやでも子供であれば、何も知らない子供であればなんのことやら?という感じなんでしょうね。アスパラ……。
ちなみに樹璃さんの回はどれも好きですね。百合、というのもあるのだけれど、みんな一方通行で決して、そう、奇跡でもない限り決してその思いが結ばれることがなさそうな、救いのなさが、すごく好きでした。
幹君と梢ちゃんの、梢ちゃん優位(幹君が優しすぎるからかもだけど)な関係も好きですね。屈折した一方通行の思い。非常にいい香りでした。
そんなウテナアニメ39話完走してきたので、ネタバレを大いに含んだ終盤部分における自分用の解説を以降投下していきます。
ネタバレ回避の方はバックプリーズです。
アンシーは世界の光である「王子様」となっている兄を救うために魔女として数多の剣をその身に受けることになってしまった。けれど、もともと彼女が自ら望んでその結果を得たわけではないのだ。
アンシーはただ、自分の兄を救いたかっただけ。だから彼を傷つける世界から、彼を隔離し封印した。
けれどそれを許せなかった人々は――王子に救ってもらえなかった少女たち=【姫】を持つ者たちは、「王子様」を独り占めした「悪い魔女=アンシー」に憎悪の剣を突き立て続ける。
今一度言おう。
アンシーは、兄を救いたかっただけであり、傷つきたいわけではなかったのだと。
たまたまそういう運命で、そういう事態になってしまっただけ。
けれどアンシーは、(もしかしたら昔は抗ったのかもしれないけれど、現段階ではすでに)現状を受け入れてしまった。少なくとも、現状兄の示すまま抗ってはいたけれど、もはやソコに彼女の意思はなかった。
けれど1話から徐々に積み上げてきたウテナとの関係により、彼女に、薔薇の花嫁に。魔女の心に、長い年月の中で失われていた彩が戻ってゆく。本来彼女が抱くべき、感情が、戻ってゆく。
ためらい、裏切り、哀しみ、愛しさ。
そして、アンシーはウテナの為に。大切なヒトの為に。友達になりたかった、優しいヒトの為に、彼女を突き放す。ぞれも、彼女が自身に背を向けている瞬間に、彼女に剣を突き立てて。
ウテナは暁生によって巻き込まれた、普通の少女だ。
ウテナは自分たちに関わらなければ、こんなに傷つくこともなかった普通の少女だ。
そして、
ウテナはアンシーにとって、かけがえのない少女だ。
ウテナはアンシーにとって、とても大切なヒトだ。
だからアンシーは、ウテナを救うために、ウテナを戦いの場から、自分たちの居るどうしようもない世界から、どんな手を使ってでも降板させなければならないのだ。
そうしなければ、きっと彼女は私を救うために、何でもしてしまうから。
それこそ、自分が受ける数多の剣を受けることだって、厭いはしないだろうから。
だから、私はウテナを、なんとしてもこの舞台から引きずり落とさなければならない。
そう、例え彼女を裏切るようなことをしてでも。
例え、彼女を背後から刺そうとも。
私は彼女の歩みを止めなくてはいけないのだ。
けれどウテナは止まらなかった。
ウテナは、止まってくれなかった。
私に傷つけられてもなお、立ち上がろうとするウテナ。
私に傷つけられてもなお、私を傷つける者の元へ行ってはいけないと留めてくれるウテナ。
私はそんな彼女に冷たい言葉を言い放つ――
それも彼女にとってどうしようもない、「女の子だから」という言葉を突きつけさえして。
貴女に私は救えない。
だから貴女は戦わなくていい。
だから貴女は傷つかなくていい。
だから貴女だけでも、助かって。
そんな場面でもなお、アンシーは「ごきげんよう、天上さん」とウテナには言わない所が、拒み切れていない証ではないかと思いました。
まるで、「私を救って」「助けて」と言いたいけれど、言えない。そんなアンシーの内なる葛藤を見せられている気がしました。
アンシーとしても兄である暁生を嫌っているわけではないのでしょう。
少なくとも、共依存しあう者としてそれなりの思いはあるのでしょう。
けれど、「私が好きだった頃のディオスに似ている――」と過去形でアンシーが思っていることから、既にアンシーは今の兄は好きではないということを示しているのでしょう。
ただ、現状に置いて兄である暁生以外に自分の立場をどうにかしてくれる人も、理解してくれる人も、自分なんかを求めてくれる人も、魔女として私を傷つけ続けるこの世界には居ないと思っていたから――ずっと暁生に従っていただけ……。
暁生も別段悪いヒトではない、はず。ただ、やり口が汚い、だけ(ある意味大人になったともいえるのかもしれないね。理想論ばかりじゃ、現実上手くいかないと、天井を知ってしまった大人のように)
少なくとも彼の目的は、アンシーによって封印された王子様の力=世界を革命する力(おそらく認知の改変能力?)を取り戻し、
王子様を封印したことにより人民の剣に身体を貫かれ続けているアンシーを救うこと。
なのだろう。
アンシーを救うためには、アンシーが王子様を封印した扉を開ける必要があり、
その王子様の扉を開くためには、それなりに強い「王子の剣」を持つ王子様が必要になってくる。(扉を開ける者の証として「王子の剣」があればいいと思うので、ウテナがアンシーに突き刺され瀕死に成ろうともあんまり気にするべき事柄ではない)
だから優秀な者を学園に集わせ、決闘なんておぜん立てをしてまでした。
暁生には妹であるアンシーを「王子様」として救えないし、そもそもアンシーに王子様を封印されているので彼は自分自身が持つ王子の剣を手に入れられないのです。
(アンシーから引き抜かれるディオスの剣は、「理想」なので、本物の王子の剣ではない)
※おそらくこの時点で、王子と姫は結ばれるモノ、兄妹などの近親相姦はアウトという概念が在るので、その根底意識を「革命」してしまえば兄でも妹を王子様として救えると思うんだけど、な……。
そんな暁生であったけれど、ウテナの王子の剣をもってしてでも扉は開かれなかった。
女の子に、王子の力はない。
力の使い方は、大人が決める――。
幻影のディオスの言葉、暁生の言葉によって、ウテナは離別する。
幼少期からの憧れである、王子の幻影から。
ぼくは彼女を救わなくちゃ。
ぼくは、王子様になりたかったわけじゃない。
ぼくは、誰にも助けてもらえない彼女を助ける者になりたかったから。
だから、女の子でも、立ち上がる。
だから、ぼくは助けに行く。
ぼくは女の子だけれど、彼女に手を伸ばして、助けることは出来るから。
きみといることで、ぼくがどれだけしあわせだったか。
(この言葉の時に、中盤までのバンクで使用されていた雫が薔薇の刻印(指輪)に触れるあの描写が出て扉が棺になるの、良いですよね)
扉の代わりに現れた棺。それは王子を封印した魔女の心であった。
ディオスが求めたのは、王子としての力を封印した扉。
ウテナが求めたのは、友としてアンシーを救うための棺。
そしてウテナはアンシーの固く閉じてしまった心の扉を開くのだ。
幼かった頃に抱いていた気高さを一つとして取りこぼすことのないまま。
けれど、開かれた棺の先でもアンシーは躊躇っていた。
ウテナが来てくれたことはとても嬉しい。
けれど、このままではウテナが私の代わりに数多の剣を――(人々からの憎悪の剣ではなく、おそらく王子様という象徴が背負わなくては消えないあらゆることを)受けることになってしまう。
そんなのは、耐えられなかった。
けれど、あまりにも必死にウテナが手を伸ばすから。
けれど、あまりにもウテナの心が嬉しくて。
私は、手を伸ばして、ウテナの手を掴んだのです。
ウテナは決して振りほどかなかった。
自重に逆らうことなくほどけてしまった手。
私は堕ちてゆく。けれど、ウテナは――
革命には、犠牲がつきものだ
と、プリパラの王子であるヒビキ様は言いました。
この、少女革命ウテナ――、アンシーの心の革命にも犠牲がつきものであり、
今回はそう――天上ウテナという王子様が、一人の【姫】を救うための犠牲となったのです。
そして、救われた【姫】であるアンシーは世界と向き合う勇気を手に入れ、意識の革命が果たされたのです。
そんな物語の犠牲となった王子様は、人々の記憶から忘れ去られます。
役目を終えた王子様は、王子様ではない「誰か」に戻り、徐々に記憶から忘れさられる。ただ【王子様】という存在だけが、傷つきながら独り歩きし続ける――。
(なんだかまどマギのまどかちゃんを思わせる感じですね。概念になる)
そして「暁生」から見た世界の中で、「天上ウテナ」のいない平穏な学園生活が始まろうとしていた。
ソレはおそらく、暁生にとっても、アンシーにとっても繰り返された日々の一幕にすぎなかったことでしょう。暁生にとって、アンシーが封印する王子の扉は開かれていないのですから。
暁生の世界は、革命されていないのですから。
――けれど、アンシーは暁生から離別する。
ウテナはいなくなったわけじゃない。
暁生の世界、暁生見ている世界。
暁生が認知している世界ではない、別の何処かへ行っているだけ。
だから、アンシーは暁生の元から旅立ち、外へ出て行く。
今まで自分を閉じ込めていた棺から、卵の殻から、兄という共依存の束縛から解放されて、
自分の意思で、外に出て行くのだ。
それも、対等な関係、友人となったウテナの元に、会いに行くために。
ウテナによる、アンシーの意識革命物語。
生徒会メンバーもまた、作中の中でウテナの存在によって、意識の改革は行われたのでしょう。
ありがとう、少女革命ウテナ。、。。。ブルーレイボックスの購入をけんとうしなくてはなりませんなこれは!!あとコミカライズとか劇場版とかも気になりますね。
ななみさん、ALLウシなんですって???あと車???世界観どうなってるんでしょう、、、(カオス)
少女革命ウテナ 文庫版 コミック 全3巻完結セット (小学館文庫)
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