十二宮12幻想
「十二宮12幻想」
監修:津原泰水
♈:小中千昭 ♉:図子慧
♊:飯野文彦 ♋:早見祐司
♎:我孫子武丸 ♏:島村洋子
♒:飯田雪子 ♓:太田忠司
黄道十二星座の主人公/ヒロインを元にした12の短編をまとめた競作集。
手に取った理由はそれこそタイトルが自分の中で未だ息づく中二心を刺激したこと。
そして、中身に興味を取った理由は裏表紙のあらすじでもある
>十二の正座に生をうけた12人の作家が、自らと同じ星座の主人公が遭遇する奇跡や悪夢をえがいていて――
という、部分。
これは絶対におもしろい!
という確信が在り、そして読んだ後、その確信が間違いでないことを感じました。
どの作品も主人公たちが遭遇する不思議な出会いや悪夢を生々しくえがいていると共に、12もある作品故にバラエティにも富んでいる。むしろ読めば読むほど味が出てきて、何度も何度も繰り返して読んでみたく作品ばかり。
これは、買ってよかった一冊です。
そんな作品の中でもっとも私が気に入った1作は……
おうし座♉の作品「アリアドネ」
私自身はさそり座なので、さそり座の作品を推すべきなのかもしれませんが、ここはおうし座を推させていただきます。
用意周到、準備万端。悪く言えば、物を捨てられない女。そんなヒロインが結婚する相手となった男と洞窟へ行き――そこで置いて行かれることになるお話。
その有様は、主人公が発送する「勇者テセウスに糸球を授け、ミノタウロスの迷宮から彼を救いだし――捨てられた女性、アリアドネ」にひどく類似していた。
物語はすべてヒロインである彼女の一人称で語られ、結婚相手である男へのある種の疑心暗鬼が渦巻き続けているため、彼女の心の動きがリアルに感じられました。
絶望や死と隣り合う洞窟の暗闇の中で、ヒロインが持っていた道具たちが彼女を暗い迷宮を導き、外へと出してくれるシーンはひどく心が躍りました。そして、彼女が外へ出た後に、自分を洞窟に置き去りにし殺そうとした男性に対しての報復行為も納得のいくことだとも。
それほどの事をしでかしてしまったのだから、
それぐらいの事を強いられても、仕方のないことなのではないかと。
どうしても、そう思ってしまうのです。